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最高裁判所第三小法廷 昭和61年(行ツ)164号 判決

広島県竹原市忠海町五四〇五番地

上告人

吉田徳成

右訴訟代理人弁護士

池田博英

広島県竹原市竹原町北堀一五四八番地の一七

被上告人

竹原税務署長

岡平定

右指定代理人

菅谷久男

右当事者間の広島高等裁判所昭和六〇年(行コ)第三号所得税更正処分等取消請求事件について、同裁判所が昭和六一年八月二八日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人池田博英の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 坂上壽夫 裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡滿彦 裁判官 長島敦)

(昭和六一年(行ツ)第一六四号 上告人 吉田徳成)

上告代理人池田博英の上告理由

第一、第二審の判決は、いずれも、上告人が訴外吉田ミチ子から一、〇九六万円の金員の融資を受けたこと(第一審判決請求原因3)を否認する。

しかし、以下の理由により、右判決は、証拠の評価を誤り、経験法則に違反したものというべく、民事訴訟法第三九四条により破棄されるべきものである。

(1) 吉田ミチ子は、昭和三六年頃から、大阪市内で、小料理屋「旅路」、スタンド「いずみ」を経営してきたものであり、上告人へ融資をした昭和四五年(一〇年間)に、一、〇〇〇万円位の金員の貯えを有していたとしても不自然ではない。

(2) 吉田ミチ子の所得税の確定申告における申告所得金額は、昭和四三年度は、わずか五五万円、昭和四四、四五年度は、右申告が全くないことは、認められるが、右の事実から、ミチ子の収入が、右のように小額であつたと推論するのは誤りである。真実、右のごとき小額であれば、店の経営は全く成立しないからである。

(3) 広島地方裁判所において行われた上告人の所得税法違反被告事件の裁判におけるミチ子の昭和四四年当時前記両店舗の売上げは、食べていつて従業員の給料、仕入れ代を払つたりすると、ほとんど何も残らないぐらいしかなかつた、旨の証言は、真実であつたとしても、それは、昭和四四年当時の事であつて、昭和三六年の開店当時から継続して、右のような状態であつたことにはならない。

(4) 広島国税局査察官青木頼夫に対するミチ子の供述は、一方的な取調に対するものであつて、信用できない。

以上の点から第一、二審の判決は、ミチ子の上告人に対する融資についての、ミチ子の証言の評価を、誤つているものといわざるを得ない。

(5) 上告人の右査察官青木に対する質問てん末書においては、ミチ子からの借入金がある旨の申立をした記載はないが、上告人は、右の旨、申立をしたけれども、妻からの融資はかえつて上告人の不利になる旨の説明を受けて、右申立を撤回したのが真実である。

以上

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